霧につつまれた国境の街、チェンカーン
November 21[Sun], 2010
国土の大部分が熱帯モンスーン気候に属するタイランド。要するに年中暑い! というわけで日本のように散りゆく桜を愛でながらお酒をのんだり紅葉狩りと称して出かけては秋の味覚を楽しんだり、はたまた雪降る山中で温泉に浸かりながらお酒をなんて季節ごとのあれこれみたいなものはないのかと思っておりました。
でもでも、タイにだって季節はないこともないんです。なかでも今回訪れる東北地方のルーイ県は、乾期になるととても涼しくて、ダウンジャケットやらセーターやらを着こんでマフラーをぐるぐる巻きにしたタイ人が、にっこり記念写真を撮りに行く人気の観光地になっているのだとか。だいたいはシャツ一枚で一年中過ごせるタイにあって、そんなあったかい格好でおしゃれができるところは珍しいです。なのでとってもテンションあがるらしいですよ。
というわけでバンコクから北へ450km。めざすはイサーン(タイ東北地方)の北西部にあるルーイ県、母なるメコンのほとりにたたずむ国境の街チェンカーンです。折しも訪れる当日はそのメコンに灯籠を流すロイクラトンの日。着ぶくれしたかわいいタイ人の姿を見物しつつ、お祭りにも参加しちゃいましょう。というわけでタイの奥座敷、チェンカーンへ!
うどん谷?
November 21[Sun], 2010 11:00バンコクはスワンナプーム国際空港より約1時間、ウドーンターニー空港へ到着。数ヶ月前にも来ましたので今回はどん兵衛も省略して、ガイドのエークさん・運転手のチェンさんと落ち合い、216号線を一路西へ。車中でさっそくエークさんに質問です。ルーイ県のみどころはなんですか? 「タイのルアンパバーン(ラオスの古都です)とも言われるチェンカーンの古い街並みと、タイ屈指のワイナリーであるシャトー・ド・ルーイですねー」へー、それはたのしみですね! 「それより楽しみなのはきれいな女性たちです!」ああそうですか。聞くところによると、ルーイはランナーとイサーンの血をひく美人が多いそうですよ。男性陣はなんだかとってもうれしそうです。
筏に揺られてのんびりランチ、フアイ・クラティング。
November 21[Sun], 2010 13:25ウドーンターニーから約1時間のドライブでまず到着したのは、フアイ・クラティング(水牛の運河という意味らしいです)という山あいの湖。ここでのミッションは湖上での優雅なランチ! 屋根のついた筏でゆらゆらのんびりごはんを食べれるみたいですよ。
ということで、とりあえず4人乗りの筏(とはいえ4畳半ほどの広さ!)を1時間30Bでチャーター。プラス120Bで湖のなかほどまで曳航してもらえます(聞くところによると筏の上でマッサージを受けることもできるのだとか/1時間200B)。で、その前に受付でペー・クルムメーバーン・フアイ・クラティンから食事のオーダー。せっかくなのでこちらで獲れるニンという魚の塩焼きやエビの唐揚げを食べたかったんですが、すでに売切れでした。さっき40cm〜50cmはあろうかという魚の唐揚げが眼の前を運ばれていきましたが、あれが最後だったんですね……。それでは、とシンハービールにあうお料理をあれこれとオーダーして、いざ湖上へ。
お父さんがモーターボートでゆっくりと私たちの筏をひっぱっていってくれます。水遊びをする家族連れや自分たちだけの世界に浸っているカップルなどなどの筏の脇をすり抜けて湖の真ん中へ。「帰りたいときには合図ね」とお父さん。筏についた旗を揚げると、陸でみているお父さんが迎えにきてくれるみたいですよ。
それではさっそく、湖上の宴会をはじめることにしましょうか! イサーン料理の定番・牛のラープ50B、ムー・デート・ディアウ(豚肉を一夜干しして揚げたの)50B、ヌア・ヤーン・ナムトゥック(牛肉のちょっと辛い炒めもの)50B、カイヂヤオ・ムーサップ(オムレツ豚挽肉いり)25B、ソムタム・ラオ20B、そしてビール(私だけ)。ラープはバジル以外にもにんにくやハーブがいろいろ入っていてとてもスパイシー。少し辛いけれど噛みしめると旨味とバジルの清涼感があわさってどんどんいけます。ムー・デート・ディアウは豚ロースの天日干しをカリッと素揚げにしてあって鉄板のおいしさですね! やーもう、ビールがすすみます!
からーいソムタム・ラオを食べたあとはオムレツやハーブで舌を冷ましつつ飲んで食べて、昼間っからいい具合。湖上を渡る爽やかな風、筏の底でたぷたぷする水音……とっても気持ちよくなってきました……
いけませんいけません。あやうく取材を放棄するところでした。そろそろ出発しなくては。名残惜しいですが白旗を揚げて退散です。それにしても本当にゆったりしたランチタイム!
チェンカーンに到着。
November 21[Sun], 2010 17:15フアイ・クラティングから車で約1時間、チェンカーンに到着しました。メコン川沿いの通りに古い木造のタウンハウスが建ち並んでいて、とってもいい雰囲気。今晩のお宿、ザ・オールド・チェンカーン・ブティックホテルも総チーク材の重厚な外観でもちろんリバーフロント。残念ながらお祭りのため川に面したお部屋は大人気でとれませんでしたが、通りを眺めることができる2階の角部屋を確保。設えられた三角クッションやテーブルがとってもかわいくて素敵です。ちょっと座ってのんびりしたいところですが、荷物を置いたらさっそくお祭り見物へ。
美人さんがいっぱい! ロイクラトンのお祭り。
November 21[Sun], 2010 17:30宿から東へ100mほど、ワット・ターコック前にやって来ました。夕暮れを迎えた川のほとりの広場にはたくさんの人が集まっています。ステージの脇には本日の主役、巨大なクラトン(灯籠)の数々。どうやらクラトンのコンテストに出品されているもののようで、バナナの葉をベースに花を飾り付けてあるんですが、龍の形をしたものや王冠型のものなど、とにかくディティールが細やかで凝ったものばかり。
そしてそのクラトンの前にずらりと並ぶ美人さんたち。よくみるとちびっこまでもがばっちりメイクに付けまつげですまし顔です。さらにその隣にはとってもお綺麗なおばさまやおばあさままで。いったいどういうことなんでしょ? 「ミス・ノッパマー・コンテストなの」と(カメラマン好みの)美人さんが教えてくれました。ノッパマーさんは1238年に興ったタイ族最初の王朝、スコータイの王妃。彼女が月見の宴を開いたのがロイクラトンの起源なんだとか。今日は村や学校から年代別に美人さんが選ばれているのだそう。ちなみにお話をきいた美人さんはアパポート・ヌックちゃん17才。すらりと背が高くて抜群のプロポーション。他の人が濃いピンクや紫の衣装で強烈にアピールするなか、うぐいす色のシルクの上着と茶系の巻きスカートがとっても上品で素敵です。彼女はチェンカーン高校の代表として選ばれたらしいです。
コームロイを飛ばそう!
November 21[Sun], 2010 19:00宿の前には竹を半分に割った燭台が置かれ、ずらりと並ぶロウソクに明かりが灯されました。広場へと向かう人たちで通りもぐっと賑やかに。そろそろクラトンを流す時間です。私も挑戦してみようと、夕方から出店のクラトンをあれこれ品定めしていたのですが、せっかくだからスペシャルなものを! と、お向かいの宿&雑貨店の女の子・ナンちゃんにつくってもらうことに。「30分くらい待ってて」というのでマンゴー入りかき氷を食べつつのんびりしていたのですが、まだまだ時間がかかりそう。難しい注文をしちゃったかな?
待っているのも退屈なのでちょっと川の様子をみにいこう、と広場に向かって歩いていくと、夜空をふわふわと横切っていく光が! コームロイ(浮き灯籠)です。チェンマイなどのロイクラトンで有名ですが、ここ数年でチェンカーンでも人気になってきたのだとか。私も飛ばしてみたい!
さっそくコームロイ(大)を買って川岸の階段へ。まずは折り畳まれたコームロイをやさしく広げ、下についている油の入った円盤に火をつけます。内側に熱気がたまってきたら支える手のポジションを変えつつコームロイを中空に掲げます。もう飛びそう、と思ってもがまんがまん。「願いごとをして!」とエークさん。あわてて心の中でなにやら唱えてみました。人差し指の先に重さを感じなくなったその時……ふわりとコームロイが浮き上がっていきました。どんどんスピードを増して遠ざかっていく灯。満月をバックにたくさんのコームロイがただよう様はとても幻想的で、いつまでも眺めていたくなります。
家族連れや学生らしいグループ、タイ人やファラン(西洋人)のカップル……。「来年も一緒に飛ばせますように」とかお願いしてたりするんでしょうか。それぞれが思い思いの場所でコームロイに火を灯し、夜空に浮かべています。コームロイが手を離れて浮かんでいく瞬間はみんな一様に顔を輝かせていて、とっても幸せそう。あーでもこんなにロマンチックな光景なのに、あとから写真をみると隣に立っていた運転手のチェンさんはえらくいかつい顔……なぜだ。
いよいよメインイベント、メコンで灯籠流し。
November 21[Sun], 2010 20:00ついにナンちゃん作のクラトンが完成しました! 他のものよりひとまわり大きいので全体の形を整えるのにとても苦労したようです。バナナの葉で編んだ角の間に蘭と黄色いお花があしらわれていてほんと力作! ずっしり重いです。以前はベースを発泡スチロールで作っていたのですが、環境に配慮してバナナの木の幹など、全てナチュラルなものでつくる方法に戻ったそうですよ。じゃあさっそく流しにいきましょう。
ヤシの葉で飾られた桟橋にはすでに大行列ができていました。みんなそれぞれクラトンを手にもってうれしそう。その中でもナンちゃん作のクラトンはかなり大きめ。ちょっぴり誇らしいです。両手でもっているので桟橋を歩くのはかなりおっかなびっくりでしたがゆっくりと列はすすんでいき、ようやく水際に辿り着きました。まずクラトンに立てられたロウソクと線香に火をつけ、一度頭上に捧げもってお祈りをしてから静かにクラトンを水面におろします……ちゃんと浮きました! 流れにのって岸辺からゆっくりと離れていくクラトン。川下には光の帯ができていてとってもきれいです。まだまだ見送っていたかったのですが次から次へと押し寄せる人並みに負けて最前列を譲りました。
ぶらぶらしてみた。
November 21[Sun], 2010 21:00フアイ・クラティングで遅めにとったランチが効いていて、まだまだお腹が空かない私たち。でも食べないわけにもいかないのでなにか軽く、と入ったのは広場のすぐ西側にある食堂ラーン・パートゥン(トゥンばあちゃんの店)。みんなピンクかオレンジかというような珍しい色合いのソースがかかった麺をたべてます。これはジョン・ブン・バーンという地元でよく食べられているもので、センミー(細い米粉の麺)かセンジャイ(太麺)を選んでルクチン・ムー(豚の肉団子)ともやしをトッピング。豆腐とにんにく・唐辛子・生姜・ナンプラーをまぜたソースをかけてできあがり。オレンジピンクっぽい色なのはこのソースでした。色は変わってますけど、あっさりしたスープにしょっぱいソースがアクセントになっておいしいです。トゥンばあちゃんは普段は学校のお昼に屋台を出してるそうですよ。
さすが人気の観光地だけあって、通りにはかわいい土産物屋さんがいっぱいです。その中にあって、店内いっぱいに布団を拡げ忙しく働くお母さんを発見。なんでもチェンカーン郊外のパクチョン、タリーなどでは綿が栽培されていて、パー・ヌアムと呼ばれる布団が名産品になっているんだとか。ブランケット並みに軽いもので250B、中くらいで350B、大が500B。2kgの綿がしっかり入ったもので650Bだそう。宿に置いてあった三角クッションもありました! 思わず買って帰りたくなりましたが、取材を考えて今日はおあずけ。
まだまだぶらぶら進んでいくと、今度は大きな映写機がおいてあるお店が。カフェかなと思って入ってみたら、むかし映画館のオーナーだったという方がやってるゲストハウス・プー・チェンカーン・ホームステイでした。あちこちに当時のものがディスプレイされていて、さっき眼に留まった映写機は80年前の日本製。「Fuji Central」と刻印がありました。当時50万バーツもしたのだとか。昔の映画のポスターが数多く飾られ、かつて場内に設置されていた椅子やちょっとレトロなソファもいい雰囲気です。やたらと写真うつりのいいおじさまと、上品なマダムにいろいろと話をうかがっているうちに、すっかり夜も更けてきました。そろそろお宿に帰って休むことにします。
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