No decorations, no special treatment – just plain natural
手を加え過ぎずに
空気感が伝わる写真を撮る
清水奈緒
Photographer Nao Shimizu
清水さんの「見たまま、感じたまま」が表現された作品は、無造作に置かれたものが、どこかキュートだったり、何気ないシーンがファッショナブルなトーンに仕上げられています。
彼女のセンスが生かされた数々の作品から、その撮影手法のヒントを探ってみましょう。
Section
見たまま、感じたまま、素直に撮る
No fancy stuff
- 写真を始められたのはいつですか?
写真に興味を持ったのは、大学生だった20歳の頃。長期のヨーロッパ貧乏旅行でのことです。写真好きのフランス人と知り合って影響を受け、帰国してすぐに中古のマニュアル一眼レフを初めて購入しました。そのあと、アルバイトで求人雑誌の学生ページの写真を担当していました。その時に、編集の人にプロのカメラマンをご紹介いただき、弟子入りすることになり、経験を積みながら、徐々に自分で撮影に行くようになりました。
- どんなシーンがお好きですか?
私は、写真はなるべく難しい事はせず、素直に撮る事を心がけています。見たまま、感じたまま、レンズも標準レンズが一番好きですし、最もよく使っています。
タイでは、バカンスで遊びに来ている人が多いので、楽しそうな瞬間やのんびりしたシーンが多く見られます。時には無防備だと思えるくらい開放的で、とにかく優しい空気を感じます。
ローカルな街歩きの楽しさもいいですね。今の日本ではお目にかかれないような、懐かしい感じのする食べ物や食器を見ることができますし、そういったものの佇まいが好きです。
また、私は記念撮影的なものに興味はなくて、なるべく景色の一部として人物が入っている風景を選んでいますね。
Section
淡く明るめにしたい時は逆光気味、
色を出したい時は順光に
Spice of light
- そのままポストカードにしたいような写真が多く、特に色がキレイです。肉眼で見るよりキレイな、鮮やかな色にするための方法を教えてください。
明るめに撮影することで、強い色のものは残り、雑多な感じが整理されるような気がします。淡く明るめにしたい時は逆行気味で撮影しますし、色を出したい時は順光を選びます。
- こちらは、何気ない生活の場をファッショナブルなトーンに仕上げておられます。自然光でしょうか?
この写真は、自然光と室内光が混ざっています。空間も見たままを撮りたいので、標準レンズ使うことが多いです。部屋などの空間を撮る時は、全てを入れようとすると狭く乱雑な印象になるので、コレと思う部分を切り取ります。
- 持ち手もストローも、向きはバラバラなのにサマになっています。「これが絵になる」という判断は、一瞬で行われるのですか?
一瞬の時と、じっくり考えるのと半々くらいでしょうか。この時は、運ばれたままのトレイを水色の壁の前に移しました。水色と茶色の組み合わせが好きなのです。バラバラの向きは、バラバラなりの魅力があり、力がありますね。
Section
露出によってイメージが様々に変化する
Exposure changes everything
- 楽しい構図ですね。
足下や手元だけでも色んな表情があるので、遊んでいて走ってきた子ども達の足下を狙いました。フレーミングを先にしておいて、そこに被写体が入って来たらシャッターを切る手法です。
- 登校中の子ども達のさりげない姿がいいですね。
たまたま移動中の車から見かけました。車で移動中は、シャッターチャンスが多いのでカメラは常に構えています。設定は絞り優先のオートにしている事が多いです。
- こちらは、強い日差しでコントラストがはっきりしています。日差しが強すぎると色がとんでしまいそうですが、このようにキレイな色に撮る方法を教えてください。
露出は覚えていません(笑)。順光なら、なるべく適正露出で撮影すると色は飛ばないですよ。データを現像する時に、PCで白飛びを補正しています。ただやりすぎると眠たい雰囲気の写真になると思うので適度に。
- さわやかな色が印象的です。
晴れ曇りのやわらかい光、空に大きな紗幕がかかった状態と言えるでしょう。光が回りやすい状態でした。カメラはマニュアルで、露出を変えてたくさんシャッターを切ったような記憶があります。状況にもよりますが、初心者の方は露出をたくさん変えてシャッターを切る事をおすすめします。露出によってイメージ は様々に変化するのでその中から好きな加減を見つける事ができますよね。
Section
おすすめの撮影スポットはクラビ
Everyday life in Krabi
- おすすめの撮影スポットはどこですか?
これはクラビの写真ですが、観光客が行き交う場所が好きです。人と風景がかちっと映像としてハマる瞬間があって、それに遭遇するとなんとも嬉しくなります。たくさんの観光客が同じような仕草をしてるとか、何かに夢中になってる人の姿が好きですね。
- 今後の目標などをお聞かせください
少し笑える、微笑ましい絵を撮りたいと思っています。あとは手を加え過ぎず、その場の空気が伝わるような写真。誰でもこういう瞬間って、見たことがあって面白いよね、と思える絵が撮れた時は嬉しくなります。ドラマチックとは真逆で、些細なシーンを拾っていけたらと思っています。チェンマイ、チェンライにはもう一度行ってみたいです。民族衣装や民族雑貨に興味があるので、製作風景なども撮影してみたいです。