朝は托鉢の儀式から。ワット・トラパングーン。
November 02[Mon], 2009 05:10おはようございます早朝です。あたりはまだ真っ暗。ロイクラトンの朝は、托鉢の儀式からはじまるそうなので叩き起こされました。クルマで歴史公園へ向かいます。公園内ではお祭に備えて徹夜作業をしていたっぽいスタッフさんたちのテントがあちこちに。芝生の上で堂々と眠ってる人もいました。たいへんですね。ので、起こさないようこっそりと歩きます。
目的のワット・トラパングーンの本堂は、池のなかの小島に。両側にろうそくのあかりが灯された橋を渡っていくと……そこはもう厳粛な雰囲気でした。すでに多くの人たちが、視界も定まらぬ暗闇のなかで、これから始まろうとする托鉢の儀式を待っている様子です。長い歴史のなかで崩壊し、土台と柱のみとなった本堂はレンガを積み上げられてつくられたもので、その上に座る仏像の表情が、ろうそくの微かな明かりに照らされています。儀式の音楽を奏でているのは若い少年少女たちです。
しばらくして僧侶たちが本堂に現れました。音楽に僧侶の唱えるお経が重なります。空が少しずつ明るくなってきました。それでも日の出までにはまだ時間があります。僧侶の言葉に合わせて、参列者が言葉を続けます。
出家僧は所有欲を否定して生きます。托鉢は、そのなかで身体を維持する必要最低限の食料を調達するためのもの。僧侶が目の前にくると、参列者は無言で手を合わせながら、各々が持ってきたお供え物を僧侶の持つ鉢のなかに入れていきます。早朝のなか色あざやかに映える黄土色の袈裟は、生命力に溢れとても神秘的です。本堂の上で再びお経を唱えはじめる僧侶たち。参列者たちにお清めの水を掛け、儀式はクライマックスを迎えたころ、ようやく太陽が地上に顔を出しました。
朝は豚の内臓のスープ、ラーン・チェヘー。
November 02[Mon], 2009 07:30なんて厳かな儀式で多少なりとも敬虔な気持ちになりはしましたが、もちろんお腹はすいています。豚の内臓のスープはどうですか! ということでいったん市内の方へ戻って「ラーン・チェヘー」へ。
豚の内臓なんてちょっとグロテスクっぽい響きだし、ものすごく油ギッシュなものを想像するかもしれませんが、実はあっさりとした味わい。だから朝ごはんにぴったりです。ただまあ、具のなかにやけに存在感のある赤黒い直方体がありまして……どうやらこれがあの豚の血をかためたもの。味はとくにないんですけどね。鉄分はきっとたっぷり。
虫ぐらい食べられます。
November 02[Mon], 2009 11:49再び歴史公園へ。公園内では、たくさんの屋台がでて、多くの人々が集っています。また、鉄を鍛造して短剣をつくるところ(刃身に刻まれた模様がかっこいい!)のパフォーマンスや、日用品や装飾品の製作実演、お米の脱穀工程などといった、タイの伝統的なものづくりや生活文化の紹介もされていてけっこう楽しめました。
そんな感じで公園内をうろついていると、なにかつまみ食いしながら歩いているおねえさんと目があいます。交流はたいせつですよね。とくに女子の人とは。なに食べてるの、と話しかけると「食べてみて、おいしいよ!」……失敗です。それってカイコのサナギですよね……。しかし、そんなめっちゃいい笑顔で差し出されると断れないのが男子の弱み。据え膳はいただかねばなりますまい。味は覚えてません。そのあとしばらく悶絶はしましたけれど。
食べ物の話ばかりのような気がします。カノムチーン・バンナー。
November 02[Mon], 2009 11:55バイクタクシー(スコータイではなぜかバイクの前にリアカーがつくというスタイル)に乗って、カノムチーン(タイのそうめん)のお店「カノムチーン・バンナー」に到着。大きな白い皿に可愛らしく盛られたカノムチーンは5色。紫、グリーン、オレンジ、白、そして薄い黄色。日本のそうめんに良く似ています。そこに細かく刻まれた野菜などを添え、数種類のカレーをかけて食べるんですが、それぞれの麺とそれぞれのカレーの絡み方で何パターンもの味を楽しむことができておもしろいです。料金は、カノムチーンが載ったお皿(一枚30バーツ)を何枚おかわりするかで決まり、カレーはいくらかけても関係ありません。
クラトンたちの大行進。
November 02[Mon], 2009 13:45歴史公園でパレードが始まりました。先頭は王室のものだというとても立派なクラトンから。その後を、たくさんの人々が続きます。道を埋め尽くすほどの女性たちが、色あざやかな衣装を身に纏って歩いていくさまはなかなか壮観でした。
ひと際歓声が大きくなると、巨大な象が現れました。その上にはこれまた美しい女性たちが。そうそう、牛が曳く車ものもあって、象にしても牛にしてもタイでは生活ともにしてきた動物なので、こういうところでは当たり前の登場なのかもですね。ここで行進してきた数々のクラトンたちは、今夜この公園の池に浮かびます。
ホテルで夕食、ル・チャーム・スコータイ・リゾート。
November 02[Mon], 2009 17:30ちょっと一休みを兼ねて、この日の宿泊先「ル・チャーム・スコータイ・リゾート」へ。今夜に備えて少し休憩をとったのち、池をのぞむオシャレなレストランで食事です。そして再び、歴史公園へ。きょうは何回目でしょうか……
いよいよこの夜、やってきたロイクラトン祭。
November 02[Mon], 2009 18:30外はすでに夜。本当にスコータイの夜は深みのある暗さなので、ちょっとした灯りでは足元も暗いままです。まるでホタル狩りに来たかのような感じですが、それでもだんだん目が慣れてきて、行き交う人々の明るい笑顔が目に入るようになりました。
そして本日の主役、クラトン(灯籠)。巨大なもの、緻密なもの、さまざまなクラトンがあたりで主張し合っています。水の精霊に感謝を表しつつ、それらに火を灯して水に浮かべ、自らの罪や災いを遠くへ流し、また魂を清めようと手を合わすのがこのお祭。ぼくも屋台で選んだものに、火を灯して池に浮かべてみました。ゆっくりと遠ざかって行くその姿を眺めながら、この旅の無事と、こんなに食べ過ぎてもどうか太りませんようにとお祈りします。
この夜空へ一緒に浮かんでしまいたい。
November 02[Mon], 2009 18:55このロイクラトンで、ずっと憧れていたのが(冒頭から書いてますが)熱気球のように空を飛ぶあのクラゲ。タイ語ではコムロイ[โคมลอย]といいます。浮灯籠という意味らしいですね。真っ暗な空をゆったりと浮遊していくあの様子、写真でみてもほんと美しい。で、どうやら50バーツぐらいであれを買うと、自分で飛ばせるのだとか! マジですか! やりますやります!
なんというか、小さいころの凧揚げしてた気分がよみがえりますね。わくわくします。まずランタンに火を点け、しばらくたつとコムロイが空から引っ張られているような感触が。でも充分その熱がたまるまで辛抱です。そして絶好のタイミングに指先の力をゆっくりと緩めて、空へ小鳩を放すように──
輝くオレンジの光は、暗闇のなかで舞うようにだんだん小さな光になっていきます。目で追っていた自分の光が、やがてあちらこちらから浮かび上がる他の光たちと合流し、この夜空の一部になっていくさまを眺めていると、すこし鳥肌がたちました。
世界遺産の遺跡を舞台に、歴史ミュージカル!
November 02[Mon], 2009 19:20というわけで、本日のメインイベントのお時間になりました。この美しくライトアップされた遺跡を背景におこなわれる、壮大な歴史ミュージカル。めっちゃぜいたくな会場ですね。自分の座席を見つけてそこに腰を下ろすと、タイ語でのナレーションがはじまりました。
照明が、舞台とワット・マハタートの塔を闇のなかに浮かび上がらせ、タイ独特の伝統舞踊とともに、スコータイ王朝の歴史ドラマが展開されていきます。王朝の誕生から、王とお后の物語……。やがて青くライトアップされたワット・マハタートの後方から、コムロイが少しずつ空へ舞いだしました。観客席からは感嘆の声が上がります。そして最後には、まばゆいばかりの大花火。躍動と静寂。これこそがスコータイですね……。いや、ていうか、正真正銘の世界遺産から花火がばんばん打ち上がってるのがすごいです……
観客の拍手喝采のなか、出演者たちは、かなり大型のコムロイをステージに持ってきました。ひとりでは飛ばせない大きさですが、みんな腕を伸ばし、絶妙のチームワークで手を放します。ゆっくりと揺れながら黒い空を浮かぶその姿は、この日にタイの人々が捧げたすべての想いを乗せて未来へと飛び立っていったような気がしました。
お祭の音を聴きながら。
November 02[Mon], 2009 22:20ホテルに戻ってテレビをつけると、タイ全国各地で行われているロイクラトンが放送されてました。それを見て、そしてもちろんきょうこのお祭に参加して、このロイクラトンがタイの人々にとってとても大切なものだということがわかりました。
この3日間は、この土地の歴史のなかで生きてきた人々の、生活における逞しさ、工夫や執着、そしてそれらの根底にあるような信仰や哀しみが、ひしひしと心と身体に染みこんでくるような日々でした。そしてそのような魂が集う祭、ロイクラトン。しかもその発祥の地であるスコータイ……
さあテレビもエアコンもそして灯りも消してベッドに入りましょう。あたりの静寂に、虫の声だけがうっすらと聴こえてきます。そのなかでゆっくりと眠りに、というところで、ドーン! 実はあのショー、本日2公演おこなわれます。どうやらその2回目の大花火ですね……。ホテルは歴史公園の近く。ぼくはまだお祭のまっただなかにいます。ちょっと苦笑いしながら、ぼちぼちで眠ることにしました。
- day 1
- day 2
- day 3
- information