Thailand
Globetrotter

テクテクタイランド

Ban Prasat / Nakhon Ratchasima

August 8[Sun], 2010

一日は、托鉢とともに始まる。

August 8[Sun], 2010 5:00

おはようございます。ただいま5時すぎ。外はあけぼの、ようよう白くなりゆく窓際、少し明かりております。眠いですけど、空気はひんやりで気持ちいい朝です。身支度整えて階下へ下りると、村長はすでにご起床で「おはよう、よく眠れた?」と笑顔。お母さんは豆乳とパートンコー(揚げパン)を出してくれました。タイの朝の定番コンビですね。

大分へ行ったのは楽しかったけど、他人と一緒にお風呂に入る習慣なんてないから温泉だけは緊張したよ、なんて村長の思い出話を聞いていると「そろそろだよ」とお母さん。この時間になるとお坊さんが村内の1軒1軒回って托鉢をします。なので庭先でスタンバイ!

6時10分。黄色い袈裟をまとった2人のお坊さんがやってきました。入り口に立つと、手を合わせなにやらお経を唱えてくださいます。そしたらわたしは、お母さんに習って、まずご飯をおひつに。そしておかずの袋をおひつの上に置きます。このとき、決してお坊さんに触れてはいけないのだとか。渡し終わったら合掌。お坊さんはさらに隣の家、お向かいの家と順に回っていきます。

朝日の光の中で、厳かな気持ちになりました。心が静まるというか、柔らかな気持ちになるというか。こんな穏やかな朝いいですね。

お袋の味伝授! 朝ごはんをつくります。

August 8[Sun], 2010 6:30

さあ、朝ごはんつくりましょうか、とお母さんが立ちあがりました。あれ、さっきのドーナツは?「あれは、ちょっとつまむものよ」。どうも朝ごはんは別にあるようです。

でもその前に、とすぐ近くの橋のたもとで開かれている出張市場へ。お肉に魚、野菜、果物、豆乳まで並んでいて、村の奥さんたちが品定めしてます。お母さんが買ったのは、小袋一杯のシメジ茸。

それを片手に台所に戻ります。広々とした台所には、小さい調理台と食器や調味料が入っている戸棚、冷蔵庫にコンロが。まずはトムヤムつくろうね、と木の臼を用意。そして再び表へ。なんとお向かいの家の木の新芽を摘み始めました。「これはね、タマリンドの木の新芽。トムヤムに入れると酸味が増しておいしいの」と一掴みほどちぎります。よその家の勝手にいいの?「この村ではね、譲り合いは常識なの」だそうです。それから、庭の植木鉢に植えてある青ネギも数本収穫。

さあ、お料理再開。「木臼に唐辛子、ニンニク、カー(ガランガ)、コブミカンの葉(柑橘系の香りがつきます)を入れてつぶすのよ」ゴンゴン、力いっぱいすりこぎをたたきつけペースト状に。「次に鍋にお水をたっぷり入れて、つぶした薬味と塩を少々入れるの」。シメジは水にさらしとくといいそうです。「煮立ったら、シメジとさっきのタマリンドの新芽を入れて、ナンプラーで味を調えて」刻んだ青ネギを散らしてできあがり。シメジのトム(煮る)ヤム(すっぱ辛い)が完成です!

次はオムレツ。まず、小玉ねぎをスライス、タマゴ3個を溶いたところに入れます。そこへマナオ(ライム)の汁少々。「マナオの汁で、オムレツがふっくら仕上がるの」だそうです。へー。さらに砂糖、ナムプラーを少々。コンロの上には熱々に熱した中華なべにたっぷり目のパームオイル。ここに一気にタマゴ投入。両面軽く焦げ目がついたら、ふわふわフライドエッグのできあがり! いい香りです!

あ、そうそう。わたし、日本の味をお母さんたちに食べてもらおうと持ってきました! と取り出したのは、お餅ときなこ。お母さんの傍らできなこ餅つくってみましたけど、気に入ってもらえるでしょうか。どきどきです。

あさごはん開始。

August 8[Sun], 2010 7:00

テーブルにできたてのシメジのトムヤム、オムレツが並びました。さらにお隣の前村長夫人が、大きな器を抱えて登場。白いご飯とへちまの若葉のスープとインゲンとへちまの若葉と豚肉の炒めものがテーブルに並びます。さらに「準備いいかな」とソンポーンさん。その手に白菜と豆腐のスープ。豪華な食卓!

さっそくいただきます! まずは、トムヤム。うーんマイルドな酸味と辛味。お向かいでちぎってきた葉っぱが入ってるとは思えません。シメジもいい感じ。ご飯をお皿によそい、インゲンの炒めものを掛けます。これは日本人好みのマイルドな醤油味。お母さんたちを見ていると、ご飯にスープも掛けるし、ご飯にオムレツも乗せるし。なんでもONライスですね。わたしも真似して。うーん、オイシイ。味が優しくて、素材の新鮮さも香りで伝わります。それに、みんなでテーブル囲んでわいわい食べるのって久しぶり。笑顔見てるだけで和みます。

おお村長、きな粉餅を食べてくれるんですね。あ、そんないっぺんにほうばっては。ああ……きなこが気管に入ったようです。若干微妙な顔……すみません。

鍵盤ハーモニカ。チューリップじゃないなにか。

August 8[Sun], 2010 8:00

食後はおいしいフルーツと共に、しばしご歓談タイム。そういえば、わたしの一芸といえばピアノです。ピアノはさすがに持って来れませんでしたが、今回は鍵盤ハーモニカをトランクに入れてきました。だってホームステイですし、「音楽」は言葉の壁を越えるかも知れないじゃないですか!

ということで、お母さんやお隣の前村長のお孫ちゃんとかソンポーンさんやポムくんたちを前に早速。なにがいいかなあと思案ののち、アジア全域で大ヒットしたといわれる谷村新司さんの「昴」を。静かに聴いてくれているのかしら、と顔を上げると、曲の盛り上がりに反してみなさん微妙な顔。あ、ご存じない? えー、じゃあじゃあ続きましては。お子さま向けのレパートリーを披露。日本の名曲「チューリップ」。ドレミ、ドレミ〜と弾き始めると、ソンポーンさんの顔はパッと明るくなりまして、「ノイノイノイ〜」と歌い始めました。

えー、この曲知ってるんですか? 感激! ソンポーンさんとポムくんが「ノイノイノイ〜」と歌い続けています。でもチューリップのメロディに似ていますが、微妙に違う。何の曲? まあでもソンポーンさんの歌に合わせて、わたしもビミョーに違う「タイ風チューリップ」を演奏。最後は、お互いに笑顔。大まかに判断して、音楽で言葉の壁を越えたと言っていいかと思います。

ふたたび村を散歩。

August 8[Sun], 2010 9:00

「村を案内するわ!」とお母さんとソンポーンさん。そして、ソンポーンさんのとこのお孫さん姉弟、ピムちゃん・ポムくんも同行です。通りすがりの家の花を教えてもらったりしながら、ぶらりぶらり。あ、猫と目が合いました。めんどくさそうに寝転んでます。垣根の下から鶏の親子が出てきて道を横断。こうゆうの、タイ時間って言うんでしょうか。そういえば、お母さんたち、なぜか手に雨傘。日傘代わり? もしやこの地域急な雨に見舞われやすいとか? と思っていると、お母さんはおもむろに傘の先を持ち、柄の部分を木の枝にひっかけ手繰り寄せます。そして「ほら」と、みかん収穫。えー! 傘の使い方を知りました。

最初に到着したのは、黄色い祠と巨大なタマリンドの木がある広場。「この木はね、昔から村を守ってくれているのよ。豊作を願う儀式もここでするの。まずはこの村に来た人を紹介しないとね」とソンポーンさん。思わず手を合わせました。

村内散歩その1:機織りの家。

August 8[Sun], 2010 9:20

「ここは、チンプリーさんの家よ」。お母さんたちは勝手によそのお家へ入っていきます。ここは夕べの儀式にもいらしたおばさまのお家。そして昨晩のフレンチのお姉さんたちもここで泊まってるみたい。蚕や繭、糸の束、機織り機が置いてあって「昔は、みんな家でシルクをつくっていたのよ。いまはうちだけになったんだけど、いまでも時々織ってるの」と。手づくりのシルクのスカーフとチェックのコットンのストールを見せてくれましたが、1日で出来るのは1mくらいだそうです。なんかかわいいので2枚買っちゃいました。シルクのは300B、コットンのは100B。Tシャツに合わせてもいいかも。

村内散歩その2:豪邸にて、椰子の実を味わう。

August 8[Sun], 2010 10:30

次にお宅訪問したのは、白い壁に囲まれた豪邸。ここはジュンロンさんの家。西洋風な芝生の庭がすてきです。「のど乾いたでしょ」と奥から出てきたジュンロンさんは、みんなにひとつずつ椰子の実を振る舞ってくれました。慣れた手つきでなたを振り下ろし、椰子の表の皮を剥いたかと思うと、ポンと切れ目を入れ、そこにストローを。飲むと口の中にほのかに草の香りが広がります。甘さもほんのり。飲み終わったら、今度は大きく穴をあけてくれて、スプーンを手渡してくれました。内側の果肉を削って食べなさいということみたい。さっぱりしたジュースと違い、白い果肉はミルクっぽい味が。まさに、自然の恵みのおやつです。

村内散歩その3:籐細工の家。

August 8[Sun], 2010 9:40

次のお家は、庭の中央に屋根つきの広々縁台。そこで女の子が籐でミニチュアの帽子を編んでます。「ここで籐を編んで、カバンや飾り物をつくってるのよ」とお母さん。「農作業の合間には村の女たちが集まって、今日は機織り、今日は籐を編むといった具合にみんなで何かしら仕事をするの。いつも賑やかにおしゃべりして笑いあって。だから、村中が親戚や姉妹みたいなものなの」。

わたしも、ちょっとミニチュア帽子づくりに挑戦。発泡スチロールの台に、帽子の頭の部分を待ち針で固定。360度に飛び出た縦芯に、湿らせた籐を上へ下へと交差させて編んでいきます。微妙にゆるいところはすかさずピムちゃんがフォロー。編むこと20分くらいでどうにか完成。鎖をつけてもらってキーホルダーの完成です。どうでしょう、これぞ正しき農ガール。わたしも「村の女」になれるでしょうか。「こんなのもつくるのよ」とお母さんが籐のバッグやかごに帽子、大小さまざまな作品を見せてくれました。うーん。「村の女」には、かなりの修行が必要です。

バッグ素敵というと、街に売りに行くのよ、良ければ卸値でいいよとのことでしたので、つい。手づくり籐のバッグ120B、帽子のキーホルダー20B。

ランチの後にお楽しみ。

August 8[Sun], 2010 11:30

家に戻ってきました。いろいろまわったけど、なんだか村長さんとお母さんの家が一番おちつくなあと言ったら、お母さん微笑んでくれました。「さ、早いけどお昼食べたらピマーイの遺跡に出かけるよ」と村長さん。地図を見るとピマーイは、バーン・プラサートのちょっと東側、ほんの15kmほどのところにあるみたいです。

お母さんを手伝って、お昼ご飯の用意。朝たっぷりつくったトムヤムと豆腐のスープに加え、お隣からソムタムとミーコラート(コラート風の焼きそば)が加わりました。つけあわせはトムヤムにも使ったフレッシュタマリンドの若葉(すっぱ味があっておいしいです)。あっという間に豪華な昼食。味が全体的にあっさり優しいし、野菜たっぷりだし、どれもおいしいし……またしても満腹。ごちそうさまでした。

踊りの神さま。ナーンラム遺跡。

August 8[Sun], 2010 13:15

「行くよ」という村長さんの掛け声で、みんなでわらわらと車に乗り込みました。後ろには、お母さんやソンポーンさんやその他女性陣&ポムくん。わたしの前には、村長さん。何でも「今日は日曜だし、近いからあんまり行くことないし、この機会に」ということでみんなでおでかけです。

出発しておよそ1時間。まずはナーンラム遺跡に到着です。ここはクメールの王だったジャヤーヴァルマン7世が13世紀ごろに建てた寺院で、地域の人たちの病院の役割もしていたのだとか。おもしろいのは、本堂の中にたくさんの人形がお供えされているところ。村長に聞くと、「ここに祀られているのはナーンラム〈踊りの神様〉なんだよ。ジャヤーヴァルマン7世がここに泊まったとき、踊り子たちが王の前で踊りを見せた(ちょうど夕べのように?)。それがすばらしかったと評判になったんだ。だから、ここには踊りが好きな人やプロのダンサーがお参りにくるんだよ」。そういえば、供えられた人形もダンスのポーズでした。ふと見ると、16歳の乙女のピムちゃんが手を合わせていました。

この木なんの木? 大きな木の不思議な公園、サイガーム公園。

August 8[Sun], 2010 14:30

さて、再び車に乗り込み、1時間。「ちょっと休憩しよう」の村長の合図でやってきたのは、サイガーム公園。ここはなんといったらいいのか、池のうえに枝を広げて互いに絡まり合う樹木のようすが不思議なところです。そうですね、めっちゃでかい藤棚みたいな感じ。おとぎ話にでてきそうな光景です。

「この木は、ベンガル菩提樹といってね。もともと1本の木が根をはり、枝を伸ばし、300年余りかけてここまで大きくなったんだ。こんなに大きくなったのは、サイガームという神様がいると信じられてるんだよ」と村長。サイガームは女性の神様なので、とくに女の人がお参りに来るそうです。木の下には、祠があったり、ベンチがあったり、占いがあったり。みんなの憩いの場なんですね。

そうそう公園に入る前に休憩で屋台に席をとったんですが、デザート的なものがなくて、仕方なしにちょっと食べ物を。そこでおもしろかったのが、ミー・ピマーイ。コラート風だけじゃなくてピマーイ風っていうのもあるんですね。これがなぜかケチャップ味で、どこかで食べたことあるとおもったらアレです、喫茶店のナポリタン。勉強になりました。

タイのアンコールワット、ピマーイ遺跡。

August 8[Sun], 2010 15:30

いよいよタイのアンコールワット、ピマーイ遺跡です。着いてみてびっくり。大きくて立派というか、圧倒されます。昨日会ったパノムワン遺跡のおじさんがおすすめといったことが分かります。

見とれていると、「ここは、タイでいちばん大きいクメール遺跡です」と背後から声。見ると中学生くらいの4人組。「わたしたちは、タイが誇る遺跡を紹介するためボランティアガイドしています」ということでしたので、お願いしました。みなさんピマーイの中学生。びしっと制服が決まってます。

「ここは元々、2000年前に建てられたのですが一度衰退しました。しかし、ジャヤーヴァルマン7世が再建して多くの人の信仰の場所になりました」「では、次に……」と、4人がどんどん交代で案内してくれます。みなさん学校でガイドの研修を受けるのだとか。ジャヤーヴァルマン7世が統治していたのは、日本では平安時代から鎌倉試合にあたるころ。日本は木の文化だけれど、こちらは石(というか土?)の文化なのだなあとあらためて実感します。

丁寧なガイドさんのおかげでたっぷり2時間遺跡を見ました。戻ってみると、お母さんたちはすっかり木陰でくつろぎ中。どうやらピマーイの街の市場でフルーツなどを買いこんでたみたいです。

たそがれ時のコラート。ナイトバザールへ。

August 8[Sun], 2010 18:30

いったん家に帰ったんだけど、途中でミー・ピマーイとか食べちゃったしお腹はへってません。なんだかちょっと遊び足りない気分。そういえば、まだコラートの街みてませんでしたね、ということでこんどはコラートへ繰り出すことになりました。

バーン・プラサートから2号線を南へ50kmくらい。「コラートといえば、スラーナリーよ」とお母さんが最初に案内してくれたのは、燦然とライトアップされたタオ・スラーナリー像。この女性は、200年ほど前、侵入してきたラオス軍を機知にとんだ作戦で打ち破り町を救ったという方で、いまもタイ国民から「モー夫人」と敬愛される存在。お参りに来る人が絶えないそうです。たしかに次から次へと人々が。ソンポーンさん曰く、「この公園に宝くじ屋が多いのは、お祈りしてから買うと、モー夫人の強運で当たる確立が上がるからよ」とのことです。あれ。宝くじがあたるから来てるの? という疑問は黙っておきました。

さて道路を隔てて5分ほど歩くと、女子のみなさんお待ちかね、コラートのナイトバザール! 暗闇にきらっきらの屋台がたまりませんね、お母さん! ということで、しばしお買い物でも。TシャツやさんにGパン屋さん、靴屋さんに雑貨屋さん、食べ物屋台もあります。ちょっとしたお祭りという風情です。かわいいビーチサンダル! 48Bを買いました。それから、ふと目に留まったブレスレット、5本セットで150Bも。ピムちゃんとお母さんとソンポーンさんとわたし。友情の印にもらってください。忘れてました。ポムくんは男子なので、日本の某キャラをあしらった小物入れを。大事にしてね!

コラート料理で満ちる幸せ、ブン・オーチャー。

August 8[Sun], 2010 19:45

そうこうしているうちに、もう8時前。お腹も程よく空いたことですし、おいしいもんでも食べましょうとやってきたのは、コラートのバスターミナルの隣にあるレストランブン・オーチャー。ざっと150席はあろうかという広々店内はほぼ満席の賑わいです。「コラートは工場や農場が多いのよ。人口もバンコクの次だと聞いてるわ。東北部の大都会ね」だそうです。

ところでメニューはタイ語ですのでお母さんたちにお任せ。野菜と豚肉炒め、アサリ炒め、しょうがエビにら炒めにザーサイタマゴ炒め、空心菜に塩タマゴサラダとどんどん来ますが、どんどんお腹に入っていきます。どれもおいしいなあ。これだけ食べてひとり80Bですよ!

蚊帳を吊っておやすみなさい。

August 8[Sun], 2010 21:30

托鉢に始まり、村の散歩、遺跡を巡ってナイトバザール。今日一日のなんと盛りだくさんなこと。見たもの体験したことが目まぐるしく脳内を駆け巡りますがとりあえず寝ましょう。虫が鳴いているのが聞こえます。明日も托鉢からはじまりますよ。おやすみなさい。