スケートボードをやっている人はもちろん「ちょっと興味があるんだよね」という人。バンコクを訪れたらぜひ「Baan Preduce」に立ち寄ってみて欲しい。タイのスケートボードカルチャーに気軽に触れることができる。
今年で20周年を迎えたタイを代表するスケートボードブランド「Preduce Skateboards」が昨年にオープンさせたスケートパークの複合施設。室内と屋外の大型スケートパークでその施設内には「Preduce」のオリジナルデッキやTシャツなどを販売するスケートショップとカフェも併設。コーヒーを飲みながらスケートパークを眺めることもできるようになっているのでスケートボードの経験はないけれど雰囲気を味わってみたい!という人も十分に楽しめる場所。
その他に、「Preduce」のオフィスなども併設され、所属するプロスケーターや地元のスケーターに気軽に出会える場所にもなっている。バンコクの街中にこれほどまで大規模の施設が、しかも無料で利用できるタイ国内はもちろん国外でも話題になっているスポット。
「Preduce」の代表を務めるサイモン氏にブランドのこと、そして今回オープンしたスケートパーク複合施設について話を聞いてみた。
「まだ学生だった時、スケートをするためにスイスからバンコクを訪れたんだ。そしてすぐにこの街が好きになったんだ。バンコクでスケーターのヌンと出会う。彼が2002年に「Preduce」という名前でスケートチームをやっていたんだ。はじめはブランドではなく、仲間でTシャツを作ったりしていたんだよね。その他にSSM ( Siam Skateboard Magazine ) というスケート雑誌も作っていた。ヌンや仲間のスケーターはアメリカやヨーロッパのスケーターに負けないくらいスケートが上手だったんだけれど、当時のタイではスケートブランドからスポンサーを受けたり、プロスケーターとして活動するチャンスはほとんどなかった。だからみんなボロボロのスケートボードを使っていたし、シューズも穴だらけ、ガムテープで補修しながら滑っていたんだ。彼らのような優秀なスケーターをたくさんの人たちに知ってもらいたいと思って海外のメディアに売り込んだり、スポンサーを探そうと考えたんだ。そんなときにヌンがどうせなら自分たちでスケートブランドを始めるのはどう?って言ったんだ。それまでタイにはスケートブランドはなかったし、僕たちにもブランドを立ち上げる知恵も経験もなかったけれど、やる気だけはあったから。すぐに始めることにしたんだ。そして「Preduce」のロゴをプリントした数種類のスケートボードを作ることから僕たちは始めたんだ」
Photo by Pruek
Photo by Janchai
スケートボードを販売したりした利益で贅沢をしなければバンコクでどうにか生活ができるようになった。サイモンとチームはみんなで大きな家を借りて共同生活を始めることになった。
Photo by Pruek
「チームのみんなで一軒の家に住むことにしたんだ。合計12人の共同生活。その家を「Preduce House」って呼んだんだ。昼間はスケートして、夜はパーティーの毎日。若かった僕たちにはとても楽しい生活だったよ。そして「Preduce」 初のスケートビデオ「Smooth」をリリースしたんだ。当時バンコクで一番人気のあったクラブを貸し切ってプレミアをやって900人もの人たちが集まった。それから「Preduce」という名前がだんだんと広まっていって2006年にサイアムスクエアに第一店舗目のショップをオープンさせることができたんだ。その後、ラチャダーとチェンマイと合計3店舗の店をオープン。2店舗はすでにクローズしてしまったけれど、サイアムの店舗は「Baan Preduce」がオープンするまでの16年間も営業を続けることができたんだ」
Photo by Janchai
昨年の11月にプラカノンにオープンした「Baan Preduce」はサイモンとチームメンバーにとって待望の夢だったという。
Photo by Janchai
「Baan Preduce の“Baan”とはタイ語で「家」という意味。僕たちがみんなで住んでいた「Preduce House」 の意味が込められているんだ。あれから20年が経って僕たちも大人になったしビジネスも大きくなった。当時の家はいつもドアが開いていて、常に友だちが遊びに来て良い時間を共有していたんだ。だからスケートパークもだれもが無料で楽しめる場所になっているし、プロスケーターも滑っているから彼らとも交流できるそんな場所にしたかったんだ。アクセスもしやすい場所だからみんなも訪れやすいロケーションなのも気に入っているよ。ここには室内と屋外のスケートパーク、パーク内にはバスケットゴールもあるんだよ。もちろんスケートショップも併設してあるからボードやオリジナルグッズも買うことができるし、カフェでゆっくりとコーヒーを飲みながらスケートパークを眺めることもできるんだ。ショップの2階には僕たちのオフィス、ウェアハウス。そして国内外から訪れるスケーターたちが泊まれる施設もある」
世界中を見てもスケーターが自らブランドを運営し、これほどまでの規模の施設を営業しているブランドは数少ない。タイでのスケートシーンを引率する存在となった「Preduce」のこれからのことについても聞いてみた。
Photo by Janchai
「ブランドだけではなく会社として、アメリカや他の国々のブランドのディストリビューション、スケートボードに特化したマーケティングやエージェンシーやイベントも手がけているんだ。経験やそこから来る出会いでいろいろなチャンスに巡り会うことができたんだ。僕たち「Preduce」が、自分たちでブランドを立ち上げようとしているローカルスケーターたちの手本になれたら良いなって思っている。新しいブランドも少しずつ増えてきていてるんだ。そんな彼らみんなで協力し合ってタイのスケートシーンを盛り上げられたら良いなと思う。これからもタイのスケートシーンを盛りあげていけたらそれは素晴らしいことだと思う。そしてタイのスケートシーンをもっと世界中に輸出していきたいね。スケートボードは欧米が中心だって思われることが多いけれど、いまではそれもだいぶ変わってきている。僕はスイス出身だけれど「Preduce」はタイのブランドなんだ。僕一人がブランドのディレクターではないしブランドの顔でもない。ブランドを支えているのはチームライダーでありプロダクトでありビデオのコンテンツそして「Baan Preduce」。それらが「Preduce Skateboards」なんだよ」
バンコクを訪れたスケート青年がタイの仲間と、タイのスケートブランドとしてここまで貢献してきたのは本当に素晴らしいことだと思う。タイのブランドとして世界中に名前を広げること、そして世界のスケーターが「Baan Preduce」に集まってくることがとても楽しみである。タイのスケートシーンを知りたい人、体験したい人はぜひ訪れて欲しい。
最近ではガールスケーターたちがとにかく元気だ。「Preduce」に所属している注目ガールスケーターのKaaofangさんにもインタビューすることができた。
「「Preduce」のスケーターの人たちがテレビに出ているのを見てスケートボードに興味をもったの。それまで内向的で、気分が優れないことがあったんだけど、スケートボードと出会ってとてもリラックスできるようになったし、今まで経験したこともないフリーダムを感じることができた。スケートボードに乗っていると必ず転ぶでしょ?もちろん痛いんだけれど、体で感じるその痛みですら私にとってはエモーショナルなことで好き」
今ではスケートボードの他にDJとモデルとしても活躍しているKaaofangさん。
「DJはハウスやテクノ、ディスコミュージックが好き。バンコクのコミューンというクラブでプレイしているわ。DJもスケートボードと同じ音楽をかけているときはとてもリラックスできるしすべてを忘れてプレイに集中できるのが好きなところ。夢?そうね、庭にスケートできるボウルがある家に住みたい。それにDJセットがあったら最高ね。毎日スケートしてDJをしてパーティーできるなんて最高。」ここにも大きな夢を持つ将来有望なガールズスケーターがいる、これから20年後がまた楽しみだ。
Photo by Janchai
Photo by Janchai
文:竹村卓
写真:呉屋慎吾
●スポット情報
Baan Preduce
住所)10 Soi Farmwattana, Phra Khanong, Khlong Toei, Bangkok 10110 タイ
Instagram : @baanpreduce
Kaaofang
Instagram : @Kaaofangs
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