タイを愛する著名人の皆さんのお気に入りのスポットを紹介するコラム企画「私とタイランド」。第4回にご登場いただくのは、DJ、執筆、デザイン、パーティーでアジアの魅力を伝えるSoi48の二人組。旅行先で出会ったレコード、カセット、CD、VCD、USBなどフォーマットを問わないスタイルで音楽発掘し、その興味は古い伝統音楽から、最先端のダンス・ミュージック、インターネットに落ちている音源まで幅広い。そんなSoi48さんが旅先で出会ったタイの魅力をお伺いしました。
昼間はレコード掘り、夜はタイ人の友達とライブに行ったり、一緒に食事する。細かく予定を決めず、スマート・フォンと距離を取って日常を楽しむのがタイでのお気に入りの過ごし方。
サバーイ(※タイ語で気持ちいい、心地よいの意味)を追求している所が大好きで、例えば学生街にあるパブでは、生バンドの演奏を聞きながら飲食をし、学生達は自分の好きな曲をリクエストし、気になる異性がいたら花をプレゼントすることができる。一方で富裕層が集まる高層ビルの屋上ではジャズやハウス・ミュージックを聴きながら洒落たカクテルを飲むことができる。イサーンにはタワンデーンがあり、人それぞれの生活に合わせてエンタメ、サバーイ空間が存在している。その空間を体感して、関わっている人たちの工夫を知るとやっぱりタイがいいなと感じる。
友達のケーン奏者に連れて行ってもらった1977年創業の老舗タイ洋食店「ルンロート」。米軍が駐留していたことで知られるウボンラーチャターニー。レコード、西洋楽器と共に外国の食文化もイサーンに流入し、タイの庶民から愛されていた。名物のタン・シチューは絶対食べて欲しい一品だが、普通のタイ料理もオススメ。
値段がお手頃なタイ料理から洋食まで食べることができるファミレス「ヘンオックヘンジャイ・ポーチャナーRCA店」は元々洋書のバイヤーだったオーナーが趣味のレコードを聴ける店としてオープンした。現在RCAにあるクラブはインターナショナルな選曲が主流だが、ここではかつて流れていた90Sタイ音楽をレコードで聴くことができる。深夜にだらだらご飯を食べていると学生に戻ったような気分に。レトロ・ゲーム機が設置されているラップラオ店もオススメ。
そして、こちらもオススメの一品。初めて「プーカエー」のカスタードパンを食べたのは、クラブ帰りの車の中だった。空腹を満たす為に齧り付いたらたっぷり入ったクリームがこぼれ出し、口周りとTシャツがベトベトになってしまったのが思い出。あまりにもクリームの多さからそれ以来、仲間内で”飲めるパン”の名称に。サムヤーン周辺にある老舗パン屋やデパ地下でも似たような菓子パンが発売されていますが、プーカエーのクリーム量は圧倒的で、日持ちもしない。冷蔵庫で冷やして食べるのもオススメ。
コロナが開けて、バンコクの鉄道網が拡大していて郊外へのアクセスが楽になった。電子マネー、宅配・配車アプリの普及にも驚かされた。これらは車を持たない観光客にとって遊べる場所が増えたことを意味する。今後新たな出会いに期待したい。
一方、お気に入りの古物屋、レストランはコロナ禍を乗り越え通常営業に。インターネットでのレコード売買が盛んな現在においても、店舗や市場で買うことができるのはやっぱり嬉しい。汗をかきながらレコードを探し、試聴して値段交渉する。まだレコード堀りの魅力がタイには残っていると言える。
タイは東南アジアの中で比較的に経済が豊か。グローバル、外に目を向けなくても地産地消で音楽を楽しんでいる所が大好きだ。職業ミュージシャンも多く、客も娯楽に金を惜しまない。先日あるサブスク会社が2023年上半期の再生回数統計をとった所、東南アジアのほとんどの国がヒップホップ、グローバルに向けて制作されたポップスが上位をしめたにもかかわらず、タイはイサーン音楽だった。ミュージシャンはプライドが高く、リスナーも外国人に媚びない。”自分たちの音楽がある”それこそがタイ音楽最大の魅力だと思う。
●スポット情報
・ルンロート
122 Nakhonban Rd, Nai Mueang, Mueang Ubon Ratchathani, Ubon Ratchathani
・ヘンオックヘンジャイ・ポーチャナー RCA店
21/104 RCA Alley, Bang Kapi, Huai Khwang, Bangkok
・プーカエー
88/8, Bang Krut, Ban Pho, Chachoengsao
Soi48
DJ、執筆、デザイン、パーティーでアジアの魅力を伝える2人組。旅行先で出会ったレコード、カセット、CD、VCD、USBなどフォーマットを問わないスタイルで音楽発掘し、その興味は古い伝統音楽から、最先端のダンス・ミュージック、インターネットに落ちている音源まで幅広い。空族の映画『バンコクナイツ』、EM Recordsタイ作品の監修の他にトークショーやTV、ラジオ出演などでタイ、アジア音楽や旅の魅力を伝えている。タイで独自の発展を遂げたEDM”サイヨー”を中心にアジアのローカル・ダンスにフィーチャーしてプレイするパーティー『ADM1317』、自身でオーガナイズしているSoi48パーティーなどDJイベントを不定期開催中。著書に『TRIP TO ISAN : 旅するタイ・イサーン音楽ディスク・ガイド 』(DU BOOKS)、『OMK#001』(OMK)がある。
