タイ料理には大きくわけて、バンコクを中心としたタイ中部料理、プーケットなどのタイ南部料理、チェンマイなどのタイ北部料理、タイ東北部のイサーン料理と4つの郷土料理があります。
第一回目となる今回は、タイ東北部(イサーン地方)の料理をご紹介します。
タイ料理の中でもタイ東北部の料理は日本人に人気なものが多く、名前を聞いたら実はイサーン料理だった……と思う方も多いかもしれません。
例えば、イサーン料理の代表格「ソムタム(青パパイヤのサラダ)」や「ガイヤーン(鶏の炭火焼)」など。
写真左:マダム・ソムタムのオーナー、ニッキーさん 写真右:マダム・ソムタムのソムタム、ガイヤーン
今回は、バンコクでソムタムを中心にイサーン料理を提供するレストラン「マダムソムタム」のオーナー・ニッキーさんに、イサーン料理の特徴や代表的な料理をご紹介いただきました。
地産地消の最たるもの「自然のものを食す」
イサーン地方の特徴として、「自然のものは何でも食す」という点が挙げられます。
農業が盛んな地域のため、畑の用水路でとれる魚、イナゴやバッタといった昆虫類などもイサーン地方の食文化に欠かせない食材のひとつです。
忙しい農家食卓に並ぶ料理は2~3品でどれも簡単に作れるものが多く、カオニヤオ(もち米)と共に頂くのがイサーンスタイルです。
魚を祀り、カゴを多用
先に述べた通り、イサーン地方は農業が盛んな地域です。用水路で獲れる魚を食べる機会が多いため、その魚にちなんでプラータピアンサーンという魚の形をしたお守りを店舗や会社に置いて商売繁盛を祈願します。ニッキーさんのお店でも店頭に掲げられています。
また、イサーン地方では家庭に大小さまざまなカゴが置かれています。例えば大きめの楕円形のカゴはナムプリック(タイ風ディップソース)やプラーラー(魚の発酵調味料)を作る時に、液を濾すために使います。
もち米を入れるための可愛らしい容器や、魚を捕まえるためのカゴ、虫を捕まえるためのカゴなど、イサーン地方の家庭にカゴはなくてはならない重要な家庭用品です。
イサーン地方に欠かせない調味料といえばプラーラー
プラーラー(魚の発酵調味料)は、塩漬けした魚を発酵させた調味料です。
プラーラーのレシピは各家庭によってさまざま。ニッキーさんのお店のプラーラーも家庭のレシピを用いており、全て自家製で作られているとのことでした。プラーラーの原料となる魚は、一年間発酵させた大ぶりのものを使用します。
魚は大きいか小さいかで、漬け込んでいく際に味の違いが出ます。
イサーン料理の代表的な料理
今回イサーン地方代表としてお話を伺ったニッキーさんのお店の店名にもなっている「ソムタム」をはじめ、イサーン地方の料理は外国人にも知名度の高いメニューが数多く存在します。その中でも3大メジャーメニューに値するのが、「ソムタム」と「ラープ」そして「ガイヤーン」。どれもメニューやレシピが地域によって多岐にわたる、奥深い料理です。
ソムタム(青パパイヤのサラダ)
名前の語源はソム=イサーンの方言で酸っぱい、タム=叩く、です。タイの屋台でソムタムを注文すると、青パパイヤを調味料や干しエビ、トマトと一緒に、ポックポックと軽快な音を奏でて叩く姿を見ることができるでしょう。酸味は生のマナオ(ライム)やトマトから。しょっぱさはプラーラー、もしくはナンプラー。甘みは砂糖、もしくはパームシュガーから。
ちなみに、ソムタムひとつとっても地域によって味はさまざま。例えばイサーン本場のものは白砂糖を使っているところが多く、甘みをほとんど感じませんが、「タムタイ」と呼ばれるバンコクで生まれ育ったソムタムは、パームシュガーを使っていて甘さを感じる味になっているそうです。
ラープ
ラープとは細かく刻んだ肉類(地方によっては生肉を用います)を、ハーブ類と調味料で味付けした料理です。日本でよく見かけるラープには挽き肉しか入れていないものが多いですが、本場の具材には肉の脂肪分、皮、内臓、種類によっては何と、動物の血を混ぜ入れるものもあります。味付けはナンプラーとマナオ(ライム)、そしてお米を炒って細粒にしたカオクアをいれるのが特徴です。カオクアが入ることによって、香ばしい香りとプチプチとした食感が残り、ハーブ類とともに肉類の生臭さを消してくれる効果があります。
ハーブ類は主に、サラネー(タイミント)、分葱、紫玉ねぎなどが使われていて、付け合わせの生野菜はキュウリやホーリーバジルの葉、オリーブの葉など、主にイサーン地方の各家庭の庭先に生えている野菜と一緒に食します。実は、ラープはイサーン地方だけで食べられる料理ではありません。北部地方にもラープクア(北部のラープ)という料理があり、味付けが異なります。
ガイヤーン(鶏の炭火焼)
ガイヤーンもイサーン料理店に必ずある料理のひとつ。鶏肉をナンプラー、唐辛子、にんにく、パクチーの根、シーユーカーオ(タイの醤油)などでブレンドしたタレに漬けおき炭火で焼いたものです。一緒に食べるタレは大きく分けて2種類。ナムチムジェオという辛く酸っぱいタレ、もしくはナムチムガイという、日本ではチリソースの名で親しまれているソースです。
マダム・ソムタムバンコク中心のオフィス街に位置する人気店。注文ごとにスタンドで手づくりする絶品ソムタムが定評です。
こちらのソムタムは、シャキシャキとした食感の青パパイヤと、フレッシュな素材が見事に融合した味わいが魅力。トウモロコシを使ったソムタムや、ガイヤーン(鶏の炭火焼)も人気です。