タイ料理には大きくわけて、バンコクを中心としたタイ中部料理、プーケットなどのタイ南部料理、チェンマイなどのタイ北部料理、タイ東北部のイサーン料理と4つの郷土料理があります。
今回ご紹介するのは、刺激的な辛さが特徴のタイ南部料理です。どのくらい辛いかというと、タイ人の誰もがタイ南部料理と聞いて「辛い」と答えるほど。辛さと酸味、塩辛が強い味付けで、他の地方と違い甘みはほとんどありません。辛さを静めるために生野菜も一緒にサーブされます。
今回は、バンコクのトンロー、アソーク、アーリーに3店舗を構える、タイ南部料理店「クアクリン+パックソッド」のオーナー・ヴァレッサラさんにタイ南部料理の特徴や代表的な料理をご紹介いただきます。
豊富な資源と様々な文化の融合
マレー半島に位置するタイ南部は、両側を海に囲まれているので海の資源が豊富に揃い、魚介類を使った料理が多いのが特徴です。魚介類と合わせるのは、南部特有の野菜たち。その中でもポピュラーなのは以下の2つです。
サトー豆
タイ南部料理といえばタイ人の誰もが真っ先に思い浮かべる食材が「サトー豆」です。
「サトー」は、タイ南部全域で見る事が出来る植物で、タイ南部に隣接するマレーシアを始め、インド、インドネシア、ミャンマー、ラオスでも食される食材でもあります。
近年はバンコクでも多くのレストランでサトー豆のメニューを出すようになったことから、タイ南部以外での栽培が増えてきているそう。ヴァレッサラーさん曰く、南部産のほうが小ぶりで味がしまっているのが特徴だそうです。
サトー豆は噛むと口の中に広がる独特の臭みが特徴ですが、実はこの匂いがクセになるという人が多い食材です。サトーの中でも食用とされている豆の部分には、血圧を下げる効果や血糖値を下げる効果があります。
バイリアン
「バイリアン」はグネモンの葉と呼ばれる野菜です。南部の中でも、チュンポン県やラノーン県で特に多く栽培されている葉で、臭みも苦みもなく食べやすいことから、近年ではサトー豆に肩を並べる人気食材になりました。ベーターカロチンが豊富なため栄養価の高い食材としてタイ人の間でも注目されています。タイの他、マレーシアやインドネシアでも同様、健康食材として重宝されています。 ※写真はバイリアンパッカイ
南インドを始めとする食文化に影響
タイ南部料理は主に、船で渡ってきた南インドからの商人たちの影響を受けていると言われているそうです。カオヤムなどに使われるナームブドゥーという魚の発酵調味料などは、その代表格です。また、ゲーンマッサマン(マッサマンカレー)やホーモックガイ(チキンカレーピラフ)のようなスパイスの香りが強い料理は、イスラム文化の影響を受けている料理です。
タイ南部料理の代表的な料理
パッサトーガピクン
パッサトーガピクン(サトー豆のガピ海老炒め)は、南部で採れた大振りの海老とサトー豆をガピという海老味噌発酵調味料と炒めたクセになる一品です。ガピ自体も匂いが強いのですが、サトー豆の独特の香りとの相性が良く、ビールの進む一品です。
バイリアンパッカイ
バイリアンパッカイ(バイリアンの葉の卵炒め)は、バイリアンをニンニクと卵で炒め、オイスターソースで味付けしたシンプルな一品。辛い料理が多いタイ南部料理が多い中、これはお年寄りから子供まで誰でも食べる事が出来るので、ほとんどのテーブルで注文されるそう。実際、クアクリン+パックソッドでも、どの支店でも人気ナンバー1のメニューです。
カオヤム
健康食品ブームにより、タイ人の間でも注目度が高まっているメニューのひとつです。ナームブドゥーという発酵調味料と乾燥唐辛子をご飯に混ぜていただきます。トッピングはもやし、インゲン豆、生サトー豆、きゅうり、人参、干しエビをつぶしたもの、炒りココナッツ、コブミカンの葉などで、各家庭によってバリエーションも変わってきます。香りの強い食材と、発酵調味料、唐辛子の程よい辛さが混ざり合って、南国気分が一気に高まります。
折角なら本場で食べてみたいところですが、バンコクでも近年タイ南部料理専門店が増えてきています。定番タイ料理は食べつくしたという方、本場の激辛料理に挑戦してみたい方、是非次のタイ旅行ではタイ南部料理にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?もちろん、「辛さをおさえて」とリクエストすれば、外国人向けの味付けにしてもらえますのでご安心を。
クアクリン・パックソッドバンコクに数ある南タイ料理レストランの中でも、連日グルメなタイ人が多く集まる一軒。南タイ出身のオーナー一家のレシピを受け継いだ、家庭的な伝統料理が揃っています。南タイ料理らしい一品「サトー豆と海老の炒め物」が絶品。