「アジアの入口」としてのタイ
現代の若者たちがアジアを知り、相互の理解を深める——とても大切なことです。できるだけ多くの方に、アジアへと出掛けていただきたい。しかしそのなかでも、なぜタイなのか。
タイはインドシナ半島のど真ん中に位置していながらも、一度も植民地化されていない国で、歴史とともに育まれてきた独自の文化を有しています。それにASEAN10カ国のなかで中枢的な存在でもありますから、アジアの総合理解にぴったりでしょう。また、アジアの中で日本と戦争体験がないのも唯一タイだけ。その意味で対日感情がたいへんよく、子供たちも先入観なく安心して互いの歴史・文化を学び、交流ができます。双方とも外国語が得意な国民ではないので、逆に気負わず気軽に英語で会話できるのも良い点ですね。
近年では兵庫県立大学附属高校をはじめ、大阪府立槻の木高校などがタイの現地学校と姉妹校の提携を結び、お互いよい行き来ができつつあります。我が京都教育大学でも近隣の大学と共同で毎年数十名の学生を短期研修で派遣しているのですが、参加した学生はその後、必ずタイを再訪しているようです。そのことからも、タイの魅力が窺えますね。
- 堀内孜(ほりうち・つとむ)
- 京都教育大学教授。89年から一年間、国際協力機構(JICA)の専門家としてタイの教育省に勤務し、01年にはチェンマイ地域総合大学、また05年にはピブンソンクラム地域総合大学から博士号を取得。「タイの教員養成」(日本教育大学協会〈編〉)『世界の教員養成Iアジア編』(学文社/05年)など論文・出版物多数。現在、全国の地域総合大学顧問もつとめている。